医師がすすめる細胞レベルのデトックスとは

腸活

”デトックス”は、近年大変人気のあるワードです。美容・健康関連の雑誌やメディアでも、酵素ドリンク、サプリメントなどデトックス関連の商品をよく見かけます。それだけ、デトックスの必要性を感じている人が多く、健康志向の高い読者なら、デトックスについてある程度の知識と経験をお持ちだと思います。

ですが、医学的根拠に基づいたデトックスを実践している人は、実はかなり少ないのではないでしょうか。そこで、YouTubeで18万人以上ものフォロワーを持つ消化器外科医、石黒成治先生の教えを基に、医学的観点からの”デトックス”について解説していきます。

 

医学的にみた”デトックス”とは?

本来”デトックス”とは、「体内に溜まった有害な毒物を排出させる」ことを意味します。

保存料や添加物が入った加工食品、農薬たっぷりの米や野菜、新しい家具に含まれるホルムアルデヒドなどの環境毒素、シャンプー、リンス、ボディソープなどのパーソナルケア製品、毛染め液、化粧品、洗剤、医薬品、排気ガス、水道水など、ありとあらゆる物の中には、私たちの体にとって悪影響を及ぼす原因となる”毒素”が含まれています。

これら全てを排除しながら生活していくことはほぼ不可能に近いと思います。

 

石黒先生によると、一般的に人の健康や生態系に影響を及ぼす毒素は分解されにくく脂肪に溶ける性質があるとのこと。特に、細胞を囲む細胞膜はリン脂質などの脂質で構成されているため、脂質の中に溶け込む毒素は細胞そのものを損傷させるのだそうです。

つまり毒素は、あなたの細胞を傷つけているのです。

しかし、私たちの体には、ある程度の毒素を解毒し、不要な物質を体外に排出するという機能が備わっています。石黒先生によると、細胞は絶えず毒素を分解代謝して細胞外に誘導し、そして腸、肝臓、腎臓、皮膚、肺を通じて排泄しています。つまり、毒素を含む不用物は、便、尿、汗、呼気となって毎日排泄されています。ところが、それでも毒素が溜まるということは、排泄器官の機能低下、もしくは排泄能力を上回るものが体内に入ってきた結果だと、先生は指摘しています。

そう考えると、短絡的に「デトックスのサプリメントを摂取すれば大丈夫」とは言えなくなり、生活全般の見直しが必要になってきます。

 

体に備わる重要なデトックス器官

多くの人が大好きな毒”アルコール”を解毒する主な器官は肝臓ですが、肝臓はアルコールの解毒以外にも、様々な毒素を解毒しています。

 

石黒先生によると、添加物や保存料、酸化した脂質などの炎症誘発性物質や未消化の食事成分、腸内の細菌などは、全て腸から吸収され血液に乗って肝臓に流れ込みます。

これらの毒は、肝臓で脂溶性の毒から水溶性の無毒な物質に変換され、その後、腎臓から尿として排泄されるか、腸から便として排泄されます。また皮膚から汗として、あるいは肺から息と一緒に排出されることもあります。

つまり肝臓は私たちの体を毒素から守ってくれる非常に重要なデトックス器官なのです。

毎日、健康のことを考えずに、好きなものを好きなだけ食べて、アルコールを大量に摂取するような生活を続けていると、肝臓は疲弊してしまい、その能力を発揮できず、体内に毒素がどんどん溜まっていってしまいます。

 

毎日24時間フル稼働の肝臓をしっかり休めよう!

普段から加工食品の摂取を避けて、無農薬野菜を選ぶなど、毒素をなるべく摂取しないように意識することは重要です。しかし石黒先生は、食事の摂取量を制限して消化に伴う代謝作業を減らすと共に、肝臓の機能をサポートする野菜、果物、ハーブティの摂取をお勧めしています。

 

肝臓の機能をサポートする食材

石黒先生は次の5つの食材をおすすめしています。

医師がすすめる少食ライフ(著者:石黒誠治 )から一部抜粋しています。

りんご

リンゴにはペクチンという食物繊維が含まれています。ペクチンは、善玉菌の餌(プレバイオティクス)となり、リーキーガット改善効果を示し腸内環境を改善します。腸から水銀や鉛などの重金属を吸着して排出することを助ける作用もあります。 腸内の毒素を軽減することで、肝臓への負担が軽減されます。リンゴに含まれるポリフェノールであるプロシアニジン、ケルセチンは炎症を抑える効果があります。

 

ビーツ

ベタレインと呼ばれる硝酸塩と抗酸化物質の供給源であり、心臓の健康に役立ち、強い抗炎症作用があります。動物実験ではビーツのジュースが肝臓のフリーラジカルのダメージと炎症を軽減し自然の解毒酵素を増加させることを示しています。

 

ニンニク

紀元前から薬としての利用されてきたニンニクは、現代でもさまざまな病気の予防や治療効果に関する報告があります。ニンニクをみじん切りにすると作られるアリシンには強力な抗酸化作用があり、肝細胞を保護する効果が認められています。ニンニクの摂取が脂肪肝を予防する効果や、週2回以上の摂取が肝臓がんを予防するなどの研究結果が報告されています 。

 

オリーブオイル

抗酸化作用を持つポリフェノールが豊富なオリーブオイルは、抗炎症効果、抗がん効果など様々な健康上のメリットがあることが知られています。オリーブオイルの脂質は1価不飽和脂肪酸のオレイン酸が83%を占めており、酸化して傷みにくく健康的な脂質と考えられています。2型糖尿病患者の食生活をオリーブオイル中心に切り替えたところ、脂肪肝の改善が認められました。

 

ミルクシスル

別名マリアアザミ。ミルクシスルに含まれる有効成分「シリマリン」には抗酸化作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用があり、解毒に重要な抗酸化物質である肝臓内のグルタチオンを上昇させる効果があります。肝臓や胆嚢の障害の治療のほか、ヘビの咬傷、アルコール、その他の環境毒から肝臓を保護するために伝統的に使用されてきたハーブです。そのため慢性肝炎、アルコール性肝炎、肝硬変に対して肝保護効果を期待して使用されています。

これらの食材を取り入れた食事で、定期的に肝臓を労わる習慣を意識してみてはいかがでしょうか。

 

デトックス生活のすすめ

ここでは、どんな生活がデトックスに繋がるのかを説明していきます。

普段の生活と照らし合わせながら読んでみてください。

排便のすすめ

排便は毎日あることが基本となりますが、消化器外科医の石黒先生は、毎日排便があっても便秘の人がいると言っています。

毎日排便があるのに便秘?!とは、一体どういう意味なのでしょうか。

 

先生いわく、便秘かどうかは”排便の回数”で決まるのではなく、食べたものがどれくらいの時間がたってから便として出てきたかによって決まるのだそうです。つまり、たとえ毎日排便があっても、それが1週間以上前に食べたものが出ているのであれば、1週間以上もお腹の中に便を溜め込んでいたことになるということです。

いくら肝臓が一生懸命に働いて不用物を腸から排泄させようとしても、便が排出されなければ、腸から毒素の再吸収が始まってしまいます。そのため、一度捨てたものは、必ず便として出さなければいけません。

そこで、普段から自分の便がどんな状態かを観察することがとても重要なポイントになってきます。

食べた物の色により便の色が変わるので、ビーツなどの濃い色の食べ物を食べることで、口から肛門までの通過時間を測ることができます。また、排便ごとに状態を確認して何を食べたかを考えることで、食事を見直すきっかけにもなります。コロコロとした硬い便の場合は、水分摂取や食物繊維が足りていないサインなので、水をよく飲んで食物繊維が豊富な食材を多めに摂取することを心がけましょう。

排便は最大のデトックスです。便秘薬を飲むことを躊躇する人もいますが、石黒先生によると、便秘で腸の中にため込んでおくより下剤や浣腸を利用してでも便を出した方がはるかに良いのだそうです。

 

朝一の生レモン水のすすめ

尿からも不用物は排出されます。その役目を担うのは腎臓ですが、腎臓にとって一番のダメージとなるのは脱水です。そのため、石黒先生は、朝一番でレモン水を500ml程度摂取することを推奨しています。

レモンに含まれるフラボノイドには、抗がん効果や抗菌、抗ウイルス効果などが期待されます。さらに、最近の研究では胃腸症状の改善や、リーキーガットの改善効果なども分かってきているので、朝一の生レモン水は、ぜひ毎日の健康習慣に取り入れて欲しいと思います。

 

サウナのすすめ

肝臓でデトックスされた不要物の一部は、皮膚から汗として排出されます。そのため、運動して汗をかくことももちろん大事なのですが、ここではサウナをおすすめします。

石黒先生によると、サウナにより排出が促される有害物質には、ヒ素、鉛、水銀、カドミウム、ビスフェノールA、フタル酸エステルなどがあります。環境から体内に流入するヒ素、鉛、水銀、カドミウムなどの重金属は、排出することが困難な有害物質です。基本的に重金属は便から排出されることが多いですが、少しは汗からも排出されています。わずかとは言え、汗をよくかく人と全くかかない人では、その差は大きいと言えます。

また、サウナには発汗効果以外に、心理的ストレスの軽減、リラクゼーション、睡眠の改善など、様々な効果が期待されるので、脱水にならないように水分補給をしながらサウナを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

深呼吸のすすめ

私たちが息を吐く時、二酸化炭素を吐き出していますが、この時、二酸化炭素以外にも多くの不用物を吐き出しています。

石黒先生によると、例えば、アルコールを摂取した人の息からは、アルコールやその分解産物のアセトアルデヒドが排出されています。また、床剤や壁材などから吸入したホルムアルデヒドなども呼気から体外に排出されているのだそうです。

呼吸も重要なデトックス経路として働きます。そこで先生のおすすめは深呼吸です。息を深く吸ってお腹の底まで落とし込み、そして長くゆっくりと吐くことで、体内の毒素を排出していきます。

石黒先生は、デトックス経路以外に、呼吸のもう一つの効果に注目しています。それは、呼吸によって身体が”アルカリ”に傾くという点です。多くの慢性疾患の原因は体が酸性に傾くことが要因となっています。そこで、”酸”である二酸化炭素を呼吸から大量に排出することで、体を”アルカリ”に傾けることができるというメリットがあります。

 

ストレスマネージメントのすすめ

ストレスがない人はこの世の中にはいないと思いますが、ストレスが与える体への影響は計り知れないほど重大です。

石黒先生は、ストレスは単にうつ病などの精神的な疾患だけでなく、心血管疾患、糖尿病、癌、自己免疫疾患など様々な慢性疾患の原因になることを指摘していて、臓器のデトックスと同じくらい、ストレスをデトックスする方法、すなわちストレスマネージメントのスキルを身に着けることを優先して欲しいと言っています。

そこで先生のおすすめは、今この瞬間を意識した生き方です。

変えられない過去を悔やんだり、まだ訪れていない未来を不安に思ったり、他人の言動にイライラしたり、これらは全て自分ではコントロールできないことです。自分でコントロールできないことは変えることができません。

『変えることができるのは今の自分だけ』という事実に目を向けて、今目の前のことに集中して取り組んでいくことで、ストレスは大きく軽減されます。

 

デトックスから始まる健康未来

デトックスと一言でいうと、万能な方法があるように思えるのですが、医師がすすめる真のデトックスとは、実は、その根底は生活習慣の見直しにあると言えます。

毎日私たちが口にするものが体にとって安全なものなのか、体に負担のかかるような生活をしていないか、便秘を解消するためにどんな食材を食べるべきなのか、これらは全てあなたの判断に委ねられています。

何も知らず何も考えずに今の生活を続けていくと、さらに健康を害してしまうかもしれません。逆に、今この瞬間に焦点を当てて、何を選ぶべきかを学び、自分に合ったものを選択することで、5年後、10年後、20年後の未来は大きく変わっていくと思います。

体のどこかに不調を感じているならなおのこと、この記事があなたの生活を見直すきっかけになることを願っています。

 

 

 

参考書籍はこちら↓

 

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