睡眠がお腹の不調を改善する!消化器外科医が明かす睡眠と腸の意外な関係

睡眠

『睡眠不足は体に悪い』というのは一般常識ですが、ついつい睡眠を蔑ろにしていませんか?


遅くまで残業をして、帰宅したら日付が変わっていることがよくある。
夜勤のある仕事で、睡眠時間がバラバラ。
寝る前についスマホやタブレットを見てしまって寝つきが悪くなる。

思い当たることはありませんか?

 

医療機器大手フィリップス・ジャパンが、世界13カ国、1万3000人に対して行った世界睡眠調査によると、日本人の平日の平均睡眠時間は6.2時間、週末でも6.7時間と、5年連続で最短だということが発表されました。また同調査で、日本人の睡眠満足度は32%、世界49%と比べて低いことがわかっています。

睡眠が健康にとって大事だという認識はあるにもかかわらず、多くの日本人は十分な睡眠が取れていないようです。

そのような現状に警鐘を鳴らすのは、消化器外科医でありヘルスコーチでもある石黒成治先生です。

そこで石黒先生に医学的観点から”睡眠がもたらす腸への影響”について教えていただきました。

 

腸は寝ている間に癒される

食べ物を口に含んだ時、口の中では唾液が分泌されます。この唾液1mlの中に1億個以上の細菌が存在しますが、これらの細菌は胃に到達すると胃酸で殺菌され胃酸1mlあたり100個以下まで減少します。そして、次の小腸で再び細菌は増加していきます。

小腸の前半部分では、胆汁により細菌が増殖しないようにコントロールされていて、腸内環境を維持するシステムが備わっています。また、殺菌された腸液を小腸の前半部から後半部まで移送するシステムもあり、これを空腹期強収縮群(MMC)といいます。このMMCと呼ばれる腸管の運動によって、胃や小腸内の食べ物のかすやバクテリアは洗い流されています。つまりMMCは、腸内の細菌数をコントロールする上で極めて重要なメカニズムとなっています。

MMCの働きが低下すると、小腸内細菌異常増殖症(SIBO)などが引き起こされ、膨満感や腹痛、便秘や下痢、過剰なガスなどの症状につながります。

 

このMMCの働きは、腸の健康において大変重要なのですが、実はMMCは空腹時にしか作動しないようになっています。つまり、お腹がぐーっと鳴ったらMMCが働いている証拠なんです!

そのため、空腹時間が一番長い睡眠中に、腸は浄化され修復されているのです。このことから、ある程度の睡眠時間をしっかり確保することが腸の健康にとって、とても重要になってきます。

 

長すぎる睡眠の体への影響

先ほど、ある程度の睡眠時間の確保が必要だと述べました。では逆に、長すぎる睡眠時間が体に与える影響はどうなのでしょうか?

Dr.石黒によると、イギリスの37歳から73歳の40万人を調査した結果、睡眠が良好な人とそうでない人では、心不全のリスクが50%も異なることがわかりました。

細かく見ていくと、早起きの人は、心不全のリスクが8%低下、7〜8時間睡眠の人では12%低下、不眠症ではない人は17%低下していました。

ここで注目すべき点は、昼寝をしない人の心不全のリスクは、34%も低下することがわかりました。つまり、毎日昼寝をする人は、心臓病のリスクが上がるということです。

驚きの事実ですよね。


また、935人の糖尿病患者を対象とした研究結果では、睡眠時間が9時間以上の人と、5時間以下の人、またいびきをかく人は、心臓病のリスクが高くなる傾向にあることが報告されています。つまり、長すぎる睡眠や短かすぎる睡眠は、どちらも体に悪影響を及ぼすということが言えます。


Dr.石黒によると、9時間以上睡眠を必要とする人の体は、炎症反応が高い傾向があり、炎症反応が高いということは、体の中に何かしらの病態があると考えられるそうです。

いくら寝ても体の疲れが取れない人は、体内で炎症が起きている可能性が高いので、一度生活を見直して、腸の改善から始めることを検討してみてはいかがでしょうか?

 

医師が認める理想的な睡眠

健康的な睡眠時間は、7〜8時間とされています。

以下に、健康的な睡眠が取れている場合の特徴を挙げています。
ご自身の状態と照らし合わせてみてください!

  • 寝つきがいい
  • 途中で目が覚めない
  • いびきをかかない
  • 早起きしても、1日中元気で過ごせる
  • 日中の眠気がない

 

医師がすすめる睡眠の質を上げる3つの行動

睡眠障害は、糖尿病などの代謝疾患、認知症などの神経変性疾患、精神疾患などの病態だけでなく、仕事や生活全般に影響を与えるので、睡眠について取り組むことは、健康全般において非常に重要です。そこで、良好な睡眠を得るために、生活に取り入れやすい方法をご紹介します。

 

ブルーライトカットのメガネを利用する

脳内の松果体から分泌される睡眠ホルモンと呼ばれる”メラトニン”は、明るい光によってその分泌が抑制されてしまいます。通常メラトニンは、朝の光を浴びると、体内時計からの司令で分泌が止まり、目覚めてから14〜16時間くらい経過すると再び分泌が始まります。メラトニンが分泌されると、私たちの体内では深部体温が低下し、自然な眠気を感じるようになります。ところが、スマホやタブレット、パソコンの画面などから発せられるブルーライトは、メラトニンの分泌を抑制してしまい、その結果、寝つきが悪くなったり、ぐっすり眠れなくなったりします。

どうしても夜に作業をすることが多い人は、必ずブルーライトカットのメガネを利用することをお勧めします。また、スクリーンをナイトモードにして光量を減らすことも有効です。


良好な睡眠のためにメラトニンのサプリを摂取する場合は、ブルーライトをカットしないと意味がありません。
必ずブルーライトカットのメガネを利用するなど、ブルーライトを浴びないように工夫しましょう。

 

ヨガ、マインドフルネスで寝る前の儀式を作る

睡眠前に、ヨガやストレッチなどをして体をリラックスさせたり、瞑想やマインドフルネスで心を落ちつかせ心穏やかにするなどの入眠儀式=ルーティンを作るのも効果的です。人は決まった動作をするとリラックスしやすい傾向にあり、特に副交感神経を優位にする行動をルーティン化することで、より快適な入眠へと誘導することができます。

 

アロマセラピーを利用する

アロマオイルには、睡眠の質が改善されることがいくつも実証されています。特に、ラベンダーには、リラックス作用があり、安眠効果があると言われています。

寝る前に部屋でラベンダーのアロマオイルを焚いて芳香浴を楽しんでから眠りにつくと、ぐっすりと熟睡できるようになります。

その他、質の良い睡眠には、神経系を鎮めるカモミールやネロリもおすすめです。

 

ぐっすり眠って快腸に!

睡眠は、栄養や運動と同じくらい健康を支える大事な柱です。
睡眠不足の人、または睡眠時間が長すぎる人は、今すぐ生活習慣の見直しをすべきです。

また、体の不調を感じている人は、まずご自身の睡眠を振り返ってみてください。

腸の健康と睡眠は切っても切れない関係なので、腸の状態を改善しようと思うなら、まずは睡眠を改善することを考慮しましょう!

 

 

 

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