免疫力向上は腸内環境から?医師が教える免疫力向上の秘訣

腸活

昨今の新型コロナウィルス感染により、世間による『免疫力』への注目度は以前よりも確実に増したのではないでしょうか。

感染予防対策として『免疫力』をキーワード検索をし、情報集めに奔放した方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者は、そのうちの1人です。

免疫力向上の情報や方法が溢れる中、現役消化器外科医Dr. 石黒の教えに基づいて、免疫メカニズムをわかりやすく解説します。そして感染症に負けない身体作りとなる免疫力アップの秘訣をお教えします。

私たちの健康を支える免疫力とは?

ウイルス・細菌・寄生虫や病原体などの外敵から守り健康を維持する『免疫システム』が、私たちの体には備わっています。

この免疫システムの中心となっているのが白血球です。白血球は血管やリンパ管の中を絶えずパトロールしています。外敵となる侵入者を見つけると仲間を呼び集めるメッセージを発します。

すると脳が体温を上げる指令を出します。これは体温が高い方が免疫細胞が体内で移動しやすいためです。発熱前に寒気を感じるのは、全身の筋肉を震わせ熱を発生させ、免疫細胞を体内にめぐらせているからです。そのため風邪を引いてすぐの解熱剤服用は免疫低下につながる場合もあります。服用のタイミングを見極めることが大切です。

しかしこの白血球を主とした免疫システムだけでは、外敵から私たちの体を守りきれません。外敵となるウイルスや毒素の侵入のほとんどは、食事と共に体内に入ってきます。そのため免疫機能の約70〜80%が腸内にあります。

腸内にいる免疫サポーターとなる『腸内細菌』が、病原体を侵入させないようにと常に監視してくれているのです。

私たちの免疫力を決めるのは、腸内の免疫の働きを左右する腸内環境の良し悪しと言っても過言ではありません。

 

免疫力が上がる仕組み

それでは、免疫力を上げるには腸内環境を整え、腸内細菌を増やすことなのでしょうか?

Dr. 石黒は腸とは口から肛門までの全てを指し、腸内環境を考える際には『口内環境』は無視できないと指摘します。

ここからは免疫力が上がるメカニズムを医学的観点から説明します。

【口腔内環境】

口の中には、約700種類にも及ぶ細菌が生きています。その他にも様々な形態の微生物が共存しています。約1兆個以上の微生物が、食事の際に唾液と共に飲み込まれているそうです。この細菌のほとんどが胃酸で処理されるのですが、年齢を重ねるごとに胃酸の分泌能力は低下していきます。そのため口腔内環境が悪ければ、その先にある腸内環境の悪化につながるのです。

口腔内環境を整える上で必要なことは、口腔内細菌が共存しやすい環境を作ってあげることです。この環境悪化を引き起こす原因に、食事、禁煙、飲酒があげられます。特に砂糖は注意が必要です。口内細菌が砂糖を餌に発酵して酸を作り、歯を溶かしたり、歯周病を引き起こしたりするからです。

歯ブラシと歯間ブラシを用いた定期的なお掃除も大切です。それ以外にDr. 石黒がお薦めするのが『舌磨き』と『オイルプル』です。

舌の表面は実は隠れた細菌の棲家です。特に舌が白い人は、大量の細菌が存在しているため、金属製の舌磨き専門道具を用いて1日1回お掃除をするのがお薦めです。

『オイルプル』とはインドの伝統医学アーユルベーダーの健康法で、オイルで口をすすぐことです。やり方は簡単。植物オイル(ココナッツオイル、胡麻油、オリーブオイルなど)を口いっぱいに含み約15分ほど「くちゅくちゅ」とうがいをします。そして終了後に吐き出すだけ!

すると歯磨きでは取りきれない歯肉や歯間の汚れが浮き出て綺麗になります。口腔内環境を整えてくれるだけでなく虫歯や歯周病予防にもなります。

【腸内環境】

口腔内環境を整えて、細菌が共存しやすい環境を整えました!次は肝心な腸内環境のお話です。

口から入った細菌は、胃の中の胃酸で一旦殺菌され、その数が一旦減少します。そしてその後小腸へと運ばれます。

ここで免疫と密接に関わってくるのが、腸内(腸管)を綺麗にするためのMMC(migrating motor complex;空腹期強収縮群)と呼ばれる消化管収縮運動です。腸内細菌の数をコントロールする機能として働きます。この運動が起こることで胃と小腸にある食物の残骸やバクテリアなどを洗浄し押し流して腸管を綺麗にします。

収縮運動がうまく働かず食べ物が胃腸に残っていると、それを餌に細菌が繁殖します。すると腸管が硬くなり動かなくなり、便秘、下痢、過剰ガスといった消化器症状を引き起こします。

ここで重要なのが、MMCは空腹時のみにしか起きないということです。お腹が空いた時に『ぐー』っとなるのがまさにこの運動が起こっているサインです。

腸内の細菌数をコントロールし、腸内環境を正常に保つためは定期的な腸内のお掃除が必須です。そのためMMCを起こすために、意識的に空腹の時間を作ってあげることが必要です。

 

これを摂れば免疫力があがる!〜サプリメント&食材〜

口腔内環境と腸内環境を整えて体内の免疫細菌の環境は整いました。

ここでは、摂取することで免疫力向上が期待できるサプリメントと食材をご紹介します。

【サプリメント編】

サプリメント服用は時短で簡単です。しかし、種類によっては添加物や人工物質が含まれていることもあります。そのため以下の成分を食材からも摂取するように心がけてみましょう。

 

ビタミンC

ビタミンCは、体内酸化ストレスに必要な抗酸化物質で、風邪を引いた際に摂取すると症状が早く改善します。

▶︎ビタミンCを多く含む食べ物:
キウイフルーツ・レモン・オレンジ・赤パプリカ・ブロッコリー・芽キャベツ・さつまいも

 

ビタミンD

ビタミンDは、白血球の機能のコントロールに不可欠です。抗癌効果、認知症予防効果、抗癌効果、認知症予防効果、慢性疲労改善効果、うつ病改善効果、糖尿病予防効果、男性機能の向上効果があります。日光浴で体内のビタミンD濃度が上昇するので、1日1回は太陽を浴びることをおススメします!

▶︎ビタミンDを多く含む食べ物:サーモンやイワシなどの魚、牛のレバーなどの肉類、バター、チーズ、キノコ、卵の黄身

 

亜鉛

亜鉛は、遺伝子の複製に必須とされる栄養素です。ウイルスが体内に侵入したとき、細胞内で免疫反応を起こします。亜鉛を摂取することで、風邪が治る期間が3割程短くなります。

*亜鉛サプリの原材料には十分注意してください。添加物や人工甘味料が含まれている商品が多々あります。

▶︎亜鉛を多く含む食べ物:肉、魚、牡蠣、アーモンド、南瓜の種

 

【食材編】

免疫力をあげる食材としてここでは、腸内環境をよくする食材をご紹介します。

ニンニク

食物繊維が豊富で、ニンニクに含まれるアリインという成分が免疫機能を向上させます。

 

生姜

消化を助け吐き気を軽減し、抗菌活性があり細菌の繁殖を抑えます。生姜に含まれるジンゲロールという成分に抗炎症作用、抗酸化作用があります。

 

キノコ

食物繊維が豊富で、キノコに多く含まれるβグルカンは免疫機能を活性化します。体内の感染細胞や癌細胞を攻撃するリンパ球、マクロファージ等の免疫細胞を活性化させる働きがあります。

 

りんご酢

高濃度のビタミンC、食物繊維、酢が免疫力を高めてくれます。りんごには強い抗酸化力をもつりんごポリフェノールも含まれています。

*りんご酢の効能を得るため”mother”と呼ばれる善玉菌が含むものを摂取してください。

 

緑茶

緑茶に含まれるカテキンという成分には、心臓血管疾患予防効果、がん予防効果、糖尿病の進行抑制効果があります。特にエピガロカテキン3- ガレートには炎症を抑え血管を保護する効果があります。

 

 免疫力を上げる生活習慣

最後に、風邪や感染症に簡単に負けない身体作りとなる免疫機能を強化する生活習慣をご紹介します。

【運動】

疲労を残さない運動を毎日行うことで、ナチュラルキラー細胞などといった免疫細胞が増加します。

また運動をすることにより、筋肉から『マイオカイン』という物質が分泌されます。この物質が脂肪分解促進、動脈硬化予防、インスリン抵抗性改善(糖尿病予防)の効果を促します。また筋肉の炎症を抑えてくれます。定期的な運動により慢性炎症が改善されることで、免疫力をあげることにつながるのです。

お薦めする運動は、毎日20−30分ほどのウォーキング、1日おきにジムに通う、週に2、3回自転車をこぐなどです。負荷をかけ過ぎずに定期的に行うことが大切です。

くれぐれも運動のやりすぎは体内の炎症を引き起こす原因になり、免疫力の観点からも60分以上の運動はお薦めしません。

 

【睡眠】

忙しい生活を送っている現代人は、睡眠を削り夜な夜な作業をしたり、趣味に没頭している人も少なくはないでしょう。しかし、睡眠不足は免疫機能低下につながるだけでなく、心臓血管疾患及び癌の死亡リスク増加につながってしまいます。

免疫力向上のためには、1日7-9時間の睡眠を取るように心がけてみましょう。

睡眠の重要性を2点、医学的観点から解説します。

1点目は、寝ている間に体内で免疫をあげる物質が作られるからです。メラトニンという物質です。メラトニンは睡眠導入のための物質として知られていましたが、近年それ以外にも重要な役割をすることがわかってきました。

それが免疫を強化する作用や、抗酸化物質としての機能です。腸内細菌など免疫を活性化する物質を誘導して、免疫をより強化する動きをしてくれるのです。また、細胞内のエンジンとも言えるミトコンドリアを活性酵素から守ってくれる働きもしてくれるとても優秀な物質です。

メラトニンは夜9時ぐらいから自然と分泌され深夜にかけて増加します。このメラトニン分泌を刺激するのは暗闇ですが、この間に光を浴びてしまうと分泌が抑えられてしまいます。

就寝2時間前にスマートフォンやパソコンから離れよう!というのは実はこの理由からなのです。電子機器から放たれるブルーライトはメラトニンの分泌を抑え、眠気を感じづらくなり睡眠の質の低下につながってしまうのです。

2点目は、寝ている間に脳内で排出システムが作動するからです。グリンファティックシステムといわれる、脳内の不要物質を運び出すお掃除作業です。この不要物質がうまく除去できないと、睡眠障害が起こります。それが引き金となり免疫細胞の減少につながってしまいます。

私たちは眠ることで免疫力を知らずに強化することができるのです。ただし寝過ぎは逆効果になるといった研究結果があるため、質のいい睡眠を8時間程取ることが理想と言えます。

 

腸内環境を整えて最強の免疫を手に入れよう!

現役医師が教える免疫力向上の秘訣はいかがでしたでしょうか?

腸内環境は、口内環境を整えてあげることから!
普段のお口のケアをしっかり見直してみてくださいね。

免疫に効くサプリメント服用も大切ですが、定期的な運動と十分な睡眠を確保する、生活習慣を整えてみる努力もしてみてください。

そして腸内環境を整えてくれる食材を、毎日の食事にとり入れ、楽しく日々生活するのが、感染症に負けない最強の身体作りにつながるのではないでしょうか。

 

参考書籍はこちら↓

 

 

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